ろがない

Description

この作品は、どこの島国でも問題になっている漂着物の問題を取り扱ったインスタレーションです。

ある過疎地になっている島でアーティスト・イン・レジデンスを行なった時に、その島の海岸にたくさんの漂流物が漂着していること、その漂着物はもう自分たちでは取り除けないほどに層を成してもはや見守ることしかできないこと、その海岸は自分たちの自慢の海岸であることなどを聞きました。私は、その島と漂着物の在り方 - 大きなチカラに飲み込まれて、それに争うことはできず、ただただ身を任せている島民 - に驚きました。さらに島で取材をしていると、この島がかつて漁師の活躍する島であったこと、手漕き船で漁に出ていたこと、1年に1度手漕ぎ船のスピードを争う祭りがあったことなどを年老いた漁師さんから聞きました。そこで私は海岸で漂着物を拾うワークショップを行ない、この拾ったゴミを使って、かつてその島でかつて使われていた手漕ぎ船の形を再現しました。また、その再現した手漕ぎ船には船を漕ぐための「艪(ろ)」がなく、漂流物がその島から出て行かずに滞留することを暗示しました。